2020年4月23日木曜日

高校美術1 A1素描の世界

 ”素描”とは、単色の線でかたちを表すこと、またその絵。(dessin(フランス))絵画や彫刻の基礎となる行為である。
 歴史的に偉大な作品のもとには、優れたデッサンがある。たとえば、レオナルド・ダ・ヴィンチは、生涯にわたって膨大な数の手稿(codex)を残した。思いついたアイデアをスケッチにして、パトロンに売り込む。その中には、やがて絵画作品の一部となるデッサンもある。彼の思考の断片が、素描として多く準備され、構成されて大作となっていったのである。未完成作品が多いのには常人には理解できない性格の問題もあるが、常に変容する豊かで深い思考がそうさせた理由と言えよう。素描は思考を写し取る手段である。
 自分の手をモチーフにしてみよう。そこに見えるのは、見慣れた何の変哲も無い自分の一部である。しかし、ダヴィンチの目だったら、中心部に骨格をもつ血と肉の塊。それが表皮に覆われてしわができ、透明感のある人肌の色に彩られている。人それぞれの見方は千差万別。そこに自分の視点を作ってみよう。自分だったらどのように見えるのか。
 それを線や点に置き換えてみる。描き方などは、二の次で良い。感じたことを思い切って素描用具にたくして動かしてみることである。間違えることを恐れてはいけない。間違えたと思ったら、その線はそっとしておいて、次の新しい線を走らせよう。その繰り返しで、いつの間にかうっすらと感じ取ったかたちが現れるかも知れない。
 精密なデッサンは、線を慎重に選ぶ時間が必要になるが、クロッキーの場合は、瞬間的に選べば良い。間違った線でも作品の一部、脇役として華を飾るかも知れない。とにかく描く描く。素描は、完成後の作品の仕上がりよりも、そこに費やした時間を含めて行為としての作品になるのである。

レオナルド・ダ・ヴィンチ wikipedia

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