”オブジェを消せ” この啓示は過去60年に渡って真摯な美術家たちを悩ませてきた。同一性をもち、言葉で説明でき、売り買いできる西欧型美術作品群に慣れきってしまった我々には、この言葉がもつダイナミズムを捉えることができず、思い違いをしてしまう。そして悩んでしまい、作品が作れなくなる。
2024年2月22日、マツモトアートセンターGalleryで「オブジェを消せ 松澤宥」展を鑑賞する。2022年同会場で開催された「私の死」展に衝撃を受けた身としては、期待というより、また怖いもの見てみたいという好奇心に動かされての鑑賞であった。その結果は、やはりやられてしまった。誰もいない展示空間で、じっと広がる巨大な白い円を想起してみる。”お告げ”の場所には、全開の窓になんでもない寒空の街が広がる。旧来型の展示と期待していけば、作品点数は決して多くはなく、レプリカも多い状態に早々に肩透かしされてしまうだろう。しかし、そういうものではないということを突きつけられるのだ。長年松澤芸術に接してきた北澤さんが今出せる解釈がここにある。北澤さんの方法で松澤作品がより身近に垣間見られるのである。
そこに行って実際に体感し時間を共有することがいかに大切かを感じた。松本の夜が虚空間状況探知センターになったひとときであった。
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