2024年11月30日夜、宮坂了作さんの作品映像上映会が催されました。途中に本人のちょっとした解説も交わりながら本編60分あまり、退屈しない鑑賞会でした。
集まったお客さんは30名以上。会場となった”sanji”さんは了作さん宅からすぐ近くのすてきな美容院でした。会場には、アーティスト了作が誕生するに至った各時代で影響を受けた、巨匠の作品が何点か展示されていました。高松二郎、松澤宥、アメリカ時代の盟友ススム・サカグチ。そして最新の作品”水をそそぐ”シリーズ道具の数々。諏訪湖を取り囲む自治体の首長が、この容器を使って水を注ぐパフォーマンスを行いました。水は各地区の酒蔵から採取された仕込み水です。この模様は映像の中に登場しました。
映像では、近作”POISON”、”諏訪湖でうちわを扇ぐ”、”ICE”、”土に土で土と描く”とハプニングの様子を観ることができます。ドローンを多用した超視覚的な風景が作品を演出します。
カルフォルニア時代、”A・ファイア・フェスティバル”の<火>があります。帰国後、数十年にわたって描かれ来た地図のペインティング。了作さんは、この長い時期を越えて、近年ハプニングの作品を再起動させます。<植物><風><水><土>と原初的な素材を用い、あくまでも実直で真剣に、時には痛烈な批判とジョーク。映像終盤、2024年7月マツモトアートセンターで行われた”ハプニング Happening 宮坂了作 74歳 肉体 再制作”に至ります。会場にその時の写真が大きなパネルで展示されていました。全てを脱ぎ去った、本人いわく醜い74歳の肉体は、決して醜悪では無く、信念が一貫した真摯なアーティストの揺るぎない姿が映っていました。その力強さには圧巻です。
上映後、しばらく話は続きました。自身が影響を受けてきた師匠との関わり、アート界の状況。
アラン・カプロー(1927-2006)は、おそらく了作さんに最大の影響をもたらした師であると思われます。ハプニングを発明し、その後の芸術に大きな影響を与えた人物。彼が、日本人唯一の直弟子、ミヤサカに見出したのは、その後に発展するであろう自然や大地、環境と不可分な人間のありようであったのかもしれません。
しばし話を聴きながら、白壁の映像スクリーンとその下に展示された作品群の情景を見入り、これはカプロー先生に捧げられた祭壇なのではないのかと感じ入りました。まさにハプニング、この会場にいた誰もが、happen何かが起こる最初の一筆の感覚を体験し帰宅した夜でした。